事例

点呼に必要なすべての業務を統合「IT点呼支援システム」Biz/Browserで周辺機器とシステムを連携

ジェイアールバス関東株式会社

  • 業種

    運輸

  • 課題

    アルコールチェック、体調確認、注意事項の指示伝達など、運輸事業者に必須となっている乗務員の点呼業務のシステム化
    点呼の「身代わり」「なりすまし」「すり抜け」防止策徹底

  • 導入メリット
    • 点呼の確実な実施:システムがアルコール検査と連動し、検査漏れや点呼執行の失念を防止。
    • 各種データの反映:当日のバイタルデータ(体温・血圧・脈拍)のほか、健康診断結果・運転適性診断結果・事故歴などを基に、運行管理者が乗務員の特性に合わせた注意や指示伝達が可能。
    • 乗務員管理業務の効率化:勤怠管理システムと連携することで、勤務実績などを自動的に反映。
  • 対象デバイス
    デスクトップ

アルコールチェック、体調確認、注意事項の指示伝達など、運輸事業者に必須となっている乗務員の点呼。法令により実施の徹底が求められているが、ほとんどの業務は手作業に委ねられており、アルコール検査の確認も出勤簿への記入も人手に頼っていた。
ジェイアールバス関東はこれら一連の作業の電子化に取り組み「IT点呼支援システム」を構築。
Biz/Browserにより周辺機器やシステムと連携、必要な点呼機能すべてを統合することに成功。
点呼の「身代わり」「なりすまし」「すり抜け」を防止できる画期的なシステム化を実現し、完成度の高さが同業他社からも評価されている。

導入背景

スローガンは「安全・安心と快適なサービスで日本一のバス会社」
「運行管理近代化」をかかげ点呼業務のデジタル化へ

ジェイアールバス関東は高速バスを主体としたJR東日本グループのバス運行事業者であり、福島県から愛知県までの広範なエリアを17支店2営業所で事業展開している。「私たちは『安全・安心と快適なサービスで日本一のバス会社』をスローガンとしており、特に安全・安心には最大限に注力しています」とジェイアールバス関東株式会社 常務取締役 安全統括管理者 岡村淳弘 氏は強調する。乗務員教育の充実、最新の安全技術を装備した車両の積極的な導入、法令を上回る基準の勤務体系など、安全なバス運行を日々追求している。

例えば、日本で初となる高速バス仕様の訓練専用車を導入し、乗務員が運転中にどこを見ているかわかるアイマークを搭載しているほか、走行中の揺れ、アクセルとブレーキの踏み方、燃料消費量などを計測し、データ分析結果に基づく指導を実現した。

また東京-大阪間の長距離バスでは、新東名沿線の愛知県新城市内に乗り継ぎ基地を設け、乗務員を交代できるようにした。これまで長距離運行では、2人が乗務し、1人がバス車内で仮眠する形態をとっていたが、乗り継ぐことにより乗務員が宿泊所で十分な休養を取れる環境を整えている。

同社では、経営目標として「運行管理近代化」をかかげ、運行管理業務の大胆な見直しを進めた。その改革目標の1つに点呼業務のシステム化があった。2017年から現状の分析と問題点の洗い出しを進め、2018年からシステム化の要件定義にとりかかっている。

「運行の安全管理は設備に依存するところもありますが、最も重要なのは乗務員です。乗務員の体調であったり、注意力であったり、それを確認できる『点呼』が大切です」と、岡村氏は説明する。


選定理由

乗務員の健康状態を可視化し、把握・判断
点呼に必要な周辺機器と簡単に連携できるのはBiz/Browserだけ

乗務員はシフト表に従って出勤しており、勤務する時間も乗務する時間もそれぞれに異なる。出勤した乗務員はまずアルコール検査を行う。検査後、必要事項を手書きし確認印を押す。それを運行管理者が確認し、運行に必要な携行品を手渡して、乗務員は車両点検に入る。点検後、運行管理者が体調や飲酒有無、点検結果を確認するとともに、乗務員に対して運行に関する注意事項を指示伝達して点呼が終了する。

これら一連の作業を電子化するのが新システム「IT点呼支援システム」である。アルコールチェックのみならず、本人認証、体温・血圧・脈拍までを可視化することにより、運行管理者がデータに基づく乗務の可否判断や的確な指示伝達・指導ができる。安全・安心の徹底はもちろん、点呼業務の効率化と簡素化を目指した。

当初からBiz/Browserを採用する方針であったが、理由はどこにあったのだろうか。

「前提としてWebシステムにすること」と構築を担当したアイテックス株式会社は説明を始める。クライアント・サーバ型システムではPCへのインストールも運用も手間となる。

Webシステムでは一般にWebブラウザをクライアント用のアプリケーションとするが、これでは周辺機器との連携が困難だ。「IT点呼支援システム」は自動血圧計、非接触型赤外線体温計、ICカードリーダー、指静脈認証装置、マイク、スピーカーなどを接続している。それら接続規格にはUSBのほかに、RS-232Cもあれば、Bluetoothもある。

「Biz/Browserは標準構成で周辺機器と連携でき、簡単に制御できます。セキュアな状態で、通信ポートやパソコン内のリソースにアクセスできるのですが、Webブラウザではこれが困難です」とアイテックスは採用の決め手を語る。

加えて、Biz/Browserは、操作性も優れ、スピーディにシステム構築ができる。


設計開発

体温、血圧、脈拍の平均値から異常値を検出
「身代わり」「なりすまし」「すり抜け」を完全防止

同業他社を見学したが点呼システムとして統合されているものはなかった。PCを利用していても、アルコール検査結果や健康状態などをキーボード入力し、データ保存する程度のものだった。

今までに例のないシステムとして本格的にとりかかることとなり、ジェイアールバス関東株式会社 安全整備部 課長 運行管理近代化担当 竹村文善氏は度々国土交通省に足を運ぶこととなった。「当初、行政は電子化にとても難色を示しました。紙がなくなることに抵抗があるのです。とりわけ『身代わり』『なりすまし』『すり抜け』を恐れていました。本当に大丈夫かと何度も念を押されました」と竹村氏は振り返る。

「身代わり」とは他人に検査を代わってもらうことである。「なりすまし」とは代行者が本人のフリをして検査を受けること。「すり抜け」は検査自体をすり抜けることだ。目視のチェックではこれを防ぐことができるとされていたが、電子化することで保証できるかというのだ。「こんなことが実現できるとはとても思えない、とさえ言われました」と、竹村氏は苦笑いを見せる。

2018年には毎週のように打ち合わせを重ねて企画と要件定義を固め、2019年2月から構築に着手、12月にはテスト環境ができ上がった。翌2020年2月から小諸支店(長野県小諸市)に導入して実地試験を開始し、主だった支店での本格稼働は2020年4月となっている。

「システム稼働後、JRバスグルーブ各社をはじめ、近隣の多くのバス会社の方が見学にお見えになります。これなら「身代わり」「なりすまし」「すり抜け」を完璧に防止できると、完成度の高さに皆さん驚いています」とジェイアールバス関東株式会社 安全整備部 林 隆寛 氏は語る。

実装・機器連携イメージ図
実装・機器連携イメージ図

導入効果

見える化と効率化で運行管理者の業務を支援
遠隔点呼でBCP(事業継続計画)も支援

「IT点呼支援システム」はアルコールを検知した場合はもちろん、体温・血圧・脈拍の測定結果を平均値と比較し、異常値であればアラートを出す。また、乗務員管理データを参照し、運転適性診断結果や過去の事故歴も確認できる。

「アルコールチェックから順にやらないと次の段階に進めないため、実施漏れがありません。各種データを基に運行管理者が対面で判断して、乗務の可否を決定できます。これにより安全性を大幅に向上できています」と新システム最大の効果を岡村氏は語る。

また、ペーパーレス化と点呼の電子化により、運行管理者の業務が大幅に軽減された。従来のような紙に記入したり、はんこを押したりなどの面倒な作業がなくなった。

さらに、「IT点呼支援システム」と勤怠管理システムが連携することで、出退勤時間や超過勤務時間を転送できる。
「導入直後はシステム化に抵抗を感じていた運行管理者も、今では楽になったと喜ばれています」と、竹村氏は笑顔を見せる。

「IT点呼支援システム」は全支店・営業所に設置されており、他の支店からも点呼の情報を共有できる。それまで他支店の乗務員の点呼は、電話や口頭申告に頼っていたが、新システムでは遠隔地から出勤状況や健康状態をリアルタイムに把握できる。

「遠隔点呼の実現化はBCP(事業継続計画)にも役立ちます」と、岡村氏は語る。水害や地震により事務所からバスと乗務員を別の場所に避難させた場合でも、PCとアルコール検査器があればその場で点呼を実施してバスの運行が可能になる。

国土交通省もこの可能性に着目し2021年度から「遠隔IT点呼の実証実験」を開始している。「ジェイアールバス関東は『IT点呼支援システム』を使ってこの実証実験に参画しています。このシステムなくしては参画できませんでした」と竹村氏は語る。

安全・安心と快適なサービスで日本一のバス会社は、「IT点呼支援システム」で業務の効率化はもちろん、より安全で確実なバス運行も実現しようとしている。


アイテックス株式会社様導入事例ページ:https://www.itecs.co.jp/casestudy/jrbus-rollcall.shtml


点呼支援システムによる運用事例動画(アイテックス株式会社様YouTubeより)
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ジェイアールバス関東株式会社

1988年設立の高速バス運行事業者。運行開始は1933年鉄道省の鉄道省営バスにさかのぼる。収入の主体は高速バス(75%)だが、自治体と連携 した地域密着型の一般路線バスも運行。貸切・定期観光バスや自動車整備事業として車両整備を自社内で行っているほか、海外メーカーの登録ディーラーとして、2階建てバスの国内輸入や他社向け車両の整備も担当している。

ジェイアールバス関東株式会社常務取締役 安全統括管理者

岡村 淳弘氏

ジェイアールバス関東株式会社安全整備部 課長 運行管理近代化担当

竹村 文善氏

ジェイアールバス関東株式会社安全整備部

林 隆寛氏

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