事例

「スマートファクトリー」への第一歩、製造現場のペーパーレス化
Biz/Browserで電子図面を自在に切り替え、作業効率化と品質向上を実現

マクセルフロンティア株式会社

  • 業種

    製造

  • 課題

    図面や指示書、作業ポイント票のデジタル・ペーパーレス化
    図面管理工数の削減

  • 導入メリット
    • 製造現場ならではのペーパーレス化。「スマートファクトリー」への第一歩
    • 32型タッチパネルを設置。図面を表示し自在に切り替える環境を提供
    • 作業ステップに必須の指示書や作業ポイント票を確実に表示し、作業ミスを防止
  • 対象デバイス
    デスクトップ

ペーパーレス化が叫ばれている。最近はDX(デジタルトランスフォーメーション)が潮流となり、オフィスからの紙伝票の一掃が進められている。しかし製造現場においては、単に図面を電子化できれば済むというものではない。製造作業を効率化し、製品の品質向上を支援できなければならない。
そこで、マクセルフロンティアが構築したのがBiz/Browserによる「デジタルダッシュボード」であった。作業卓上に32型タッチパネルを設置し、図面や指示書、作業ポイント票などを表示して自在に切り替え、作業を大幅に効率化。図面管理にかかっていた工数トータル621時間/月の削減に成功した。


 

導入背景

設計・製造・品質保証・情報システム部門が一体となってお客様のニーズに即応
スマートファクトリーを目指し、図面の電子化に本格着手

マクセルフロンティア(株)米沢事業所は主に、産業機器向けのシステムボードを設計・製造している。「設計・製造・管理部門が一体となってお客様のニーズにスピーディに対応できることが強みとなっています」と、DMS事業部 製造部 部長 森谷博文 氏は説明する。お客様のニーズに応える為に様々な対応を行う中で、部品の改版や仕様変更が発生する。これに速やかに且つ確実に対応するための体制が整備されているのである。

米沢事業所では早くから図面の電子化に取り組んでいたが、なかなか本格化されていなかった。多品種少量生産なことから、図面が膨大な数になる。

その図面も各工程の係ごとに一部しか配布されず、グループ内の他の人間が使っていると作業できない。パラレルで作業することができず非効率的であった。

図面には指示書が付いていることが多く、この有無の確認も必要である。経験が浅いと必要な図面を揃えるのに時間を要してしまう。図面の探し方や、見方にもスキルが必要であり、効率化やミスの防止が課題となっていた。

「当社は『スマートファクトリー』を標榜していましたが、目標が高すぎてなかなか進みませんでした。大きく前進するきっかけとなったのは2020年4月の会社統合です」と、ペーパーレス化の契機を管理本部 情報システム部 情報システム課 主任 後藤秀昭 氏は語る。

システムボードを製造しているのは、岐阜事業所と米沢事業所の2拠点であり、ここで図面の共有化が求められた。既存の図面をPDF化して、SharePointで共有する仕組みであった。

「岐阜は図面のデジタル化が早くから進んでいて、これに追いつくことが求められ、早急に取り組むことになりました」と、管理本部 情報システム部 担当部長 山中洋一 氏は語る。


選定理由

Biz/Browser選択のポイントは使いやすさ
継続的にシステムを改善できることから内製化に踏み切る

米沢事業所では図面電子化のコンセプトを「シンプル&スピーディ」とし、システムを「デジタルダッシュボード」の名称にした。従来、完璧なものを求めすぎて、期間もコストも過大に見積もっていた。これを極力シンプルにして短期間で終わらせるシステム化を目指したのである。

そのステップを3つに分割し、ステップ1のPDF化は2020年4月完成。ステップ2はPDFを表示するモニタの据え付け(ハードウェア)、ステップ3は画面操作の制御(ソフトウェア)とし、一丸となって進める体制とした。

確認を急いだのが、表示されたPDF図面の制御ハンドリングのためのソフトウェアであった。後藤氏はこの相談をオープンストリームに持ちかける。
「以前Internet Explorerからの移行ツールを探していた際にBiz/Browserを検討しており、真っ先に問い合わせました」と後藤氏は振り返る。

オープンストリームからBiz/Browserによるデモ版が1週間ほどで届いた。

「デモ版は1画面でしたが、2分割4分割でも対応できるとわかり、大丈夫と確信できました。最大のポイントは使いやすさです。これなら自分たちでも構築できます」(後藤氏)。

他に候補となるツールはなかったのだろうか。

「Web版で同じような機能を提供するものを探したのですが、他には見当たりませんでした。図面を検索できるパッケージもありますが、当社の使い方に即しているものはありませんでした。ここは当社の強みの部分で、既存のパッケージで置き換えると現場の混乱につながります」と、山中氏が応える。

継続的な改善ができるということもあって、同社では内製化に踏み切った。


設計開発

作業卓上に32型タッチパネルを設置。バーコードを読み込むと該当する図面や指示書を表示

2020年4月の会社統合と同時に「SharePointによるPDF図面の共有化」が完了し、米沢事業所ではモニタ探しが開始された。A3サイズの図面を表示し、その回りに必要な情報を展開できる大きさということで、画面の大きさは32型とした。さらに、作業卓上でキーボードを使うことは困難なことからタッチパネルでなければならない。

「32型という大きさもさることながら、それでいてタッチパネル機能を持っているものを探すのはけっこう大変でした。加えてコロナ禍で調達には時間がかかりました」(山中氏)。

手袋をしての作業であったことから、手袋のタッチを感知する性能も必要であった。市販品には希望する製品がなく、業務用のモニタを探し出し、作業台をカスタマイズして取り付けた。

この据え付けが2020年12月。年が明けて、2021年3月にBiz/Browser購入の社内手続きが完了し、ソフトウェアの整備が開始される。

「内製化を選択しましたが、ゼロから構築したわけではありません。プロトタイプを作ってもらい、それを引き取り、手を加えていきました。標準化のモジュールもいくつか作ってもらい、それらを組み合わせることで比較的容易にシステム構築できました」と構築を担当した後藤氏は語る。

「わかりやすい操作画面とするのが今回の目標でした。指示書や作業ポイント票は電子化されておらず、それらをPDF図面に紐付けて、同時に画面表示できるようにしました」と協力したDMS事業部 設計部 製品技術課 技師 大河原博樹 氏は補足する。

作業台には、製品とその工程流動表が回ってくる。工程流動表のバーコードを読み込むと、該当する図面が表示される。画面には「指示書」と「作業ポイント票」のボタンがあり、これが付属する製品には必ず表示される。

作業内容を示すのが「指示書」であり、作業のポイントを示すのが作業ポイント票である。

タッチパネルだから、スマホのように簡単に拡大縮小できる。2分割にも4分割にでもすることができ、どこにどのような図面を配置するかも自由だ。

PDFには自分だけの書き込みができるようになっている。自分で重要と思うところは一時的に赤線やマーカーを引き、終了した作業にチェックすることもできる。

システム構成図

導入効果

紙図面の配布・ファイリング・探すにかけていたトータル621時間/月を削減。電子化することで人為的ミスも撲滅

「電子化だからといって単純に紙図面をなくせばいいというものではありません。製造業では図面を使って作業をするので、その作業をいかに効率化するか、ミスを防止できるかが重要です」と山中氏は訴える。

作業前に指示書を確実に確認するのが必須である事から、指示書を確認せずに次の作業に移れない仕組みとした。これは作業ポイント票も同様である。製造のノウハウが蓄積されているのが作業ポイント票だ。同じ製品を同じ製造作業者が作業できればいいが、生産計画の中で製造作業者の割り付けは変わり、その都度ノウハウ的な指導を行うと時間を要してしまう。これを避けるために引き継ぎのポイントや失敗しやすい箇所を作業ポイント票で示している。

図面を探し出す手間も大幅に短縮された。図面を探しに行き、無い場合持ち出した人物を確認して問い合わせることもあるが、さらにその先の担当者が保持していることもあり手間取っていた。さらに図面に指示書と作業ポイント票がある場合は、それらも探し出さなければならず、初心者の方は作業に必要なドキュメントを揃えるのに時間が掛かる。図面管理部署では紙図面をコピーして各部署に配布し、配布された先ではパンチで穴開けして、ファイリングするため、保管・更新の手間も必要であったが、「デジタルダッシュボード」によりこれら手間から解放された。

「『デジタルダッシュボード』で紙図面にかかっていた時間を月にトータル621時間削減できました」と後藤氏は笑顔を見せる。

「加えて製造工程内を作業開始の都度歩くというのは、ものに接触したり、転倒したりする危険性もあります。この不安もなくなりました」(山中氏)。

「製造現場でのシステムとして導入しましたが、他の部門や管理職の人からもこれは使いやすくて羨ましいという声があがっています」と大河原氏も補足する。

残っている課題はあるだろうか。

「社内システムがWebブラウザでできているので、そのインタフェースをBiz/Browserに移行しようと検討中です」と後藤氏は応える。

「ノウハウを持っているのは現場です。そのノウハウを生かして、これからも効率化と品質向上に努めていきます」と、森谷氏は抱負を語った。


ユーザープロフィール
マクセルフロンティア株式会社

マクセルフロンティア(株)は、2020年4月、マクセル情映テック(株)とマクセルシステムテック(株)が合併し設立された会社である。マクセルグループの一員として、産業機器向けシステムの受託開発、画像認識システム製品、プラスティック光学レンズ製品の開発から量産までを一貫して提供している。 マクセルグループ独自のアナログコア技術をベースに、フロンティア精神を常に持ち続け、お客様と一体になった取り組みを展開している。

マクセルフロンティア株式会社DMS事業部 製造部 部長

森谷 博文氏

マクセルフロンティア株式会社管理本部 情報システム部 担当部長

山中 洋一氏

マクセルフロンティア株式会社管理本部 情報システム部 情報システム課 主任

後藤 秀昭氏

マクセルフロンティア株式会社DMS事業部 設計部 製品技術課 技師

大河原 博樹氏

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